一年前、彼女は身体から離れた。お通夜前日、手を合わせに行った。身体はあったけど、彼女はもういなかった。綺麗な満月の夜だった。
彼女との付き合いは長く、たぶん、そうだな。18年?くらい。当時シングルマザーで2人の子どもを育てていた彼女は、その後よき出会いがあり結婚し、子どもを授かり、さらに年月は経ち、孫が産まれておばあちゃんにもなった。
彼女の病気がわかり、気遣うことが増えて初めて彼女の人生に触れることとなった。苦しい環境の中で子ども時代を過ごしてきたと。
彼女がこの世から離れて一年が経った。近しい人たちだけで持ち寄りご飯会。賑やかな一周忌。「笑って過ごしてほしい」と彼女の願いは今もなお守られている。
そんな中、10歳から知っている現在二児の母である彼女のムスメと話した。ムスメは闘病中の苦しい母を、家族を、ずっと支えてきた。自分もいつだって崩れてしまいそうになるのをこらえながら。今は、母の代わりに家族に笑顔を振りまき、毎日家事を担っている。ムスメは私にこう言った。
「いつも甘いミルクの入ったカフェオレじゃなくて、時々ブラックのコーヒーが飲みたくなる、みたいな。」
今の幸せな家庭環境と、母が育ってきた家庭環境をこう表現した。ずっと苦しかったんだろう。母を愛しながら、母の生い立ちを愛せないのは。ずっと恐れていたんだろう。母の苦しみを自分が背負っているような気がして。
そうして、言った。
「両方、大事だなって思えたんだ。」
スッキリした、美しい笑顔で。綺麗な満月みたいに。
ねぇ。あなたのムスメはすごいね。あなたの苦しみを解き放ってくれたよ。いや、一緒にそれをしたのかもね。だから、安心してね。あなたの家族はあなたの愛情に満ちて生きてる。肉体はなくとも、愛の循環は続いている。すてきなことだね。
私は何にもしてやれないけど、何にも必要ないみたい。
私のblogを楽しみにしてくれているムスメに捧ぐ
「今日は西野じゃないから(笑)」